ボトックス注入と「ボツリヌス菌」の関係って?
公開日:2019/10/23 / 最終更新日:2019/10/23
シワ改善治療として人気の「ボトックス注入」。治療を受けたことのある方やこれから受けてみたいという方なら、ボトックスが「ボツリヌス菌」と関係があるということを目にしたことがあるかもしれません。
一方、ボツリヌス菌と言えば、食中毒のニュースなどで耳にすることも多い細菌の名前です。育児中の方なら「はちみつにはボツリヌス菌が混ざっている可能性があるので、赤ちゃんには食べさせてはダメ」ということもご存知でしょう。
シワ治療に有効なボトックスと食中毒の原因になるボツリヌス菌、いったいどんな関係があるのでしょうか? ボトックス注入の安全性についてと合わせてご紹介します。
ボツリヌス菌とボトックス
ボツリヌス菌は、19世紀末にベルギーの医師によって発見された細菌です。ボツリヌスの語源は、ラテン語でソーセージを意味する「ボツルス(botulus)」。当時、ヨーロッパではソーセージやハムを食べて食中毒になる人が多く、調べたところ原因菌としてこの細菌が発見されたのでボツリヌスと命名されました。
食品中にボツリヌス菌が増え、ボツリヌス菌が産生する毒素を食品と一緒に摂取することで起こるのがボツリヌス食中毒です。ボツリヌス食中毒では吐き気や嘔吐に加え、言語障害や視力障害など神経症状が現れるのが特徴となっています。
ボツリヌス食中毒の原因となるのが、「ボツリヌストキシン(Botulinum toxin)」です。これは「ボツリヌス菌が産生する毒素」を意味しています。この略称が「ボトックス」です。
ボトックス注入の安全性
ボツリヌス毒素は、本来きわめて毒性が高いことが知られています。ただし、加熱やアルカリ処理により毒性を失わせることが可能です。無毒性化したボトックスをごくわずかな量使用することで、美容目的の治療などに活用するのがボトックス注入治療なのです。
先ほど、ボツリヌス食中毒では神経症状が現れるとお伝えしました。これは、ボツリヌス毒素に、神経伝達物質である「アセチルコリン」の働きを阻害する性質があるためです。ボトックス注入では、この性質を利用することで注入部分にシワが寄ることを防ぎ、表情ジワの改善などの効果が得られます。
ボツリヌス菌は、AからGまでの7種類に大別され、その毒素であるボツリヌストキシンも7種類に分けられます。現在、美容治療などに使用される「ボトックス」は、米アラガン社から発売されているA型ボツリヌストキシン製剤の商品名です。安全性と持続性がともに高く、国内では唯一厚生労働省の認可を取得しているボトックス製剤となっています。